雇用統計ショックの真相
雇用統計ショック
債券市場ではこの2020/6/5発表の米国雇用統計が「雇用統計ショック」と言われるほど、インパクトのあるサプライズであった。
米国雇用統計が発表される2日前にADP雇用報告という民間企業による雇用統計を予想する数値の発表がある。個人的にはADPはあまりあてにならないと思っているのだけど、一部ではこれもマーケットの材料になっていて実際に本物の雇用統計が発表される前にADPでマーケットがインパクトを受けることもしばしばある。
そこで、ADPの予測値と本物の統計局の発表にどの程度の乖離があるのか、公式Webサイトから簡単にデータが手に入る範囲で2002年4月からプロットしてみたところこのようになった。比較しているのはFOMCが金融政策決定の材料にする大きな要因の一つ、非農業者部門雇用者数のうち、実数だ。
今回の雇用統計で、いかに想像を超えるポジティブな数字(債券市場にとっては価格の下落、金利の上昇を招く)が出たかが一目でわかるだろう。
実際に米国債10年利回りはサプライズ直後に0.9%を越える水準まで上昇したが、どうも今回のポジティブサプライズは特殊要因によるもののようだ、ということを確認して現在は発表前の水準以下に戻っている。
雇用統計サプライズの特殊要因
経済ジャーナリスト伊藤洋一氏によれば、
1. アメリカ政府が雇用維持を条件に 6600 億ドル(約 72 兆円)という巨額の枠を設けて従業員への給与支払いを企業から肩代わりする異例の資金供給を行った。この枠の中では企業は従業員の再雇用でも資金を受け取れるため、企業は一時解雇していた従業員を大規模にリコール(呼び戻した)した
2. 休業を余儀なくされていたレストランやバーが各州での経済活動再開の動きに合わせて従業員を大規模に戻した。5 月に増えた雇用 250 万のうちの約半分(137 万人)はこの分野で生じた雇用だ
3. 建設、サービスなどは広い業種で再雇用の動きが出たが、特に歯科医師業界がスタッフを大規模に再雇用し、その数は全体 250 万人の約 10%に達した
ということらしい。
なので過度に楽観視出来ない、というのが今回の雇用統計ショックの実情なのでしょう。
コードスニペット
データは自分で収集してcsvなり何なりに収める必要がありますが、グラフを描くコードスニペットだけ掲載しておきます。
import pandas as pd import numpy as np import datetime import matplotlib.pyplot as plt sheet = pd.read_csv('us_employ - abs_data.csv') df = pd.DataFrame(sheet) x = [] for d in df[df.columns[0]].values: x.append(datetime.datetime.strptime(d, '%Y/%m')) y1 = list(df[df.columns[3]].values) y2 = [0] * len(x) plt.figure(dpi=120) plt.fill_between(x, y1, label="NFP gap between ADP and LSB") plt.plot(x, y2) plt.legend() plt.show()